La Blanca
半球状に盛られていたバニラアイスが、ウェハースを道連れに音も無く崩れ落ちた。直上から降り注ぐ強烈な光で、ガラス器に貼り付いた水滴が次々と消えていく。
それとは対照的に、私の手中に納まっているパイントグラスは凍えそうなほど冷たい。中のミルクを飲もうとさっきから手で暖めているけど、それも限界だ。
私はグラスをテーブルに置き、光の中へそっと滑らせた。グラスが半分ほど入ったところで手を離してしばらく待つ。その間に傍らのBLTサンドへ手を伸ばした。
萎びて噛み切れないレタスと闘っていると、グラスから湯気が上がるのが見えた。あわててグラスの縁を掴もうとし、あわてて手を引っ込める。ミルクの熱が全体に伝わり、素手で持てる限界を越えていた。
テーブルに備え付けられたインターホンを使えば、黒いUVコートを身に纏った男を呼び出すことができる。私の言うことを一応は聞いてくれるので、ミルクのおかわりを持って来させることも、光の中からミルクを引き上げさせることも、その両方ともを命じることできる。だけど、たかがこんなことで呼びたくは無い。最近の彼は、あからさまに私のことをバカにしている。彼らが求める成果を出していない以上は仕方ないのかもしれないけれど。それでも、あの蔑むかのような視線は嫌いだ。
バニラの匂いで顔を上げるとアイスクリームは蒸発し、完全に消え失せていた。器に残されたのは干乾びたウェハースの残骸だけ。その手前にある私のパイントグラスも、白いリングをこびり付かせながら幾らかミルクが減っていた。
私はシャツを脱いでそれを捻り、グラスの上からそっと掛け回す。光に触れないよう、慎重に。日光を反射鏡で幾重にも束ねた光だ。普通の人間でもUVコートを羽織る必要がある。皮膚ガンになりたいのなら話は別だ。
影の国へグラスを引っ張り出した頃にはミルクが半分に減っていた。知らない間に緊張していたのか、喉が焼け付いたかのように痛い。ベーコンの塩味も合わさっているのでなおさらだ。
背後で大きな音がした。
鋼鉄のドアが軋んで開く音が、巨大なドーム状のこの部屋いっぱいに木霊する。しばらく後に続くのはゴトゴトという鈍い足音。私は振り返ろうとはしない。ここにはいつも同じ奴しか入って来ないからだ。
私はまだ少し熱いミルクを一気に飲み干した。火傷こそしなかったけれど、ミルクが気管に少し入り思いっきりむせた。下着姿の身体を折り曲げて咳込んでいるのに、足音の間隔は全く変わらない。
椅子にだらしなくもたれかかりながら肩で息をしていると、男がようやく私の隣に立った。全身を隈なく漆黒のコートで覆っている。目元だけが開いているデザインのもので、そこにはサングラスがすっぽりと収まっている。表情は全くわからない。私にわかるのは僅かな隙間から見える黒い地肌と、マスク越しのくぐもった声だけ。
彼はタンパク質で汚れたグラスを見て舌打ちをし、私の顔を覗き込んだ。
「サングラスをしろといつも言っているはずだ」
私を嘲っている。コートを剥いで顔を見るまでもない。
「だって、キレイじゃない」
彼を無視して、私は光の方を向いた。
天井に開いた穴から光が一直線に伸びている。まるで光の柱だ。柱の直径は2メートルぐらい。それ以外に部屋の照明は無いので、暗闇とのコントラストが一際美しい。
仕事熱心な隣人はそんな感情を持ち合わせていないのか、鼻を一つ鳴らしただけだった。
「お前の目が潰れたらどうするんだ。いいからさっさと着けろ」
ぶっきらぼうだけど優しい言葉。でも、私の身体を心配してくれているわけじゃない。あくまで自分の身が心配なだけだ。
犬とは本当に悲しい生き物で、上の命令には絶対服従だ。どうして俺がこんな生っ白い小娘のお守りをしなきゃいけないんだ。彼の内心はきっとこんな感じに違いない。
相変わらず裸眼のままの私に苛立ったのか、彼が強引にサングラスをはめ込んだ。抵抗してもよかったのだけれど、それでは彼があまりに可哀想すぎる。なんといっても彼はただの犬だ。私の手を噛まないように躾られているお役所の犬だ。彼に許されているのは遠巻きにうなり声を上げることだけ。指を舐めることさえも本来は許されてはいない。
だから罪には罰だ。危害を加えずとも彼は私に触れた。私が特別な人間であることを思い知らせてあげなくては。
「ねえ。ミルクのおかわり、持ってきてよ」
光の柱に入り、アイスクリームの器へと手を出していた彼がこちらを見た。直上から降り注ぐ光が彼のコートに奇妙な陰影を落としていた。彼はしばらく固まっていたが、やがてゆっくりとうなずいた。
「さっきみたいに、冷た過ぎるのは無しだからね」
手に食器を抱えた彼が通り過ぎざまに私の横で立ち止まった。
「俺は早く家に帰りたいんだ。本当に呼び出せるものならさっさと呼び出せ。いいな?」
私が何事かを言う前に、ブーツの足音をさせながら彼は歩み去った。
それから十分後に届けられたミルクは、やはり凍えそうなほどに冷たかった。
ママからは『お前の肌はミルクのようだ』と言われ続けてきた。どうせならシルクに喩えられたかったけど、私の肌は度重なる火傷で荒れていたのでいくら身内贔屓でもそれは無理な話だ。私がもっと器量良しに生まれていたのなら、また別な言い方をされていたのかもしれないけれど。
それは、幼かった私にとって不幸以外の何物でもなかった。他のみんながボールを手に空き地へ駆け出していく様を、日陰からサングラス越しに見つめる毎日。低所得者向け住宅でひっそりと暮らす私たちに、UVクリームを一日一本使えるほどの余裕は無かった。
一緒に遊べないのでは友達もできるはずがない。私がやったことといえば、光が入らないようにカーテンを閉め切った部屋で一人ボールを蹴りつけること。普通の女の子に混ざってのママゴト遊びなんてもっての他だったし、本の虫に甘んずるのも我慢ができなかった。確かに肉の付きは少し悪かったけど、だからといって他の人間よりも私が劣っていたわけじゃない。機会が平等に与えられていれば、そこいらの人間には絶対に負けなかったはずだ。いや、負けるわけがなかった。
なにしろ私は普通じゃない。特別な子どもだ。神様はメキシコ移民の子の私に白人よりも白い肌をくれた。赤い瞳と銀色の髪も一緒に。
そう、私はアルビノだ。
先天的にメラニン色素を持たない真っ白な人間。そしてその白さは太陽すらも妬ませるほど。光が私の肌に有害なのはきっとそのせいだ。メラニンなんかは関係無い。
私が外を歩くとすぐに人が集まってくる。炎天下の黒いコート、何かの拍子に曝け出される白い肌と赤い瞳。どこへ行っても珍奇の視線は止まなかった。中には膝を曲げて拝み伏す老人も。
いつだったか、“ヴィラ・コチャ”と呼ばれたことがあった。インカ伝説の<白い人>、天地創造の神。海を越えてきた白い征服者(コンキスタドーレス)たちは古代帝国を滅ぼしたが、お金の無い私は海を跨いだことがない。私がそう告げると彼らはこう言った。『あなたのお力をもってこの穢れた世界をお改めください』と。その三分後には、罵声と腐ったトマトを浴びながら逃げ出す羽目になった。
私が『天使を見た』と吹聴して回るようになったのはその頃だ。
子どもたちは私を遠ざけ、大人たちは私に近付く。
ミルクを飲めば共食いだと囃し立てられる。UVコートから肌を曝せば皺だらけの手が不躾に伸ばされる。
確実に他の人間とは違うのに、私は何もできなかった。だから、それぐらいの悪戯は許されて当然だと思った。自分の外見に見合うだけの高さへよじ登るために、ヤコブの梯子がどうしても必要だった。
それに、まるっきりの出鱈目だったわけじゃない。私の赤い瞳は光にひどく敏感で、薬を飲まずにサングラスを外すと勝手に目が踊る。普通の人にハッキリ見えるものも、私にはおぼろげに見える。腕を広げた素っ裸のマネキンが、私には翼を広げた天使に見えるのだ。
私が天使を『見る』ようになってからも、私に対する周囲の扱いは変わらなかった。子どもたちには弾かれ、大人たちは手招く。
それでも鬱屈とした気分は幾らか晴れた。天使の一挙一動が人間をこんなにも踊らせるなんて、思ってもみなかった。
『天使を見た白い少年』の噂はじりじりと広がっていき、やがて犬たちがそれを嗅ぎ付けた。
彼らは人目を忍んで音も無く静かに現れ、風采の上がらないくたびれた風貌とはまるで正反対の、インクの匂いをぷんぷんさせた真新しい紙幣をテーブルの上に山と積み上げた。
どうやって養育費を回収しようかといつも頭を悩ませていたママは、私が今までに見たことのない笑顔で何枚かの紙切れにサインし、私はゲイシャのように身請けされた。
私が真っ先に連れて来られたのは、午後9時のニュースでおなじみの建物だった。
いくつもの扉や門をくぐり抜けた先で、真っ白な歯が私を出迎えた。
目の前にいる大統領は役者上がりのキャリアを持っていた。何年か前の選挙CMで以前の仕事ぶりが流れたことがある。ママがすぐにチャンネルを変えてしまったのでよくは見えなかったけど、転職を考えたのは道理にかなっている、とその時は思った。
実際、彼の転職は大成功を納めた。オーバーな身振りを添え付けた怪しげな文法の演説はことあるごとに論議を呼び、大統領がブラウン管に登場するとリモコンはソファの上に投げ出された。
最近は何かと物騒で、彼の演技を生で見た者は少ない。そういう意味では私は運のいい人間なのかもしれないけど、肝心の演技が面白くないのではその幸運も半分以下だ。
私の肌の白さを誉め、境遇を憐れみ、泣き、励まし、そして笑う。私が口を開いたのは、名前の読み間違いを指摘した一回きり。後は永遠に彼のターンだ。私の順番は回ってこない。台本通りの完璧な演技。今なら役者としても十分にやっていけるはずだ。
歯茎を見せんばかりの笑顔を作る大統領を見ているうち、私は動物園の猿山を思い出していた。山の頂上に座るボス猿が仲間外れになっている私を目ざとく見つけ、指を差して笑った。標的となった私には、その他大勢から一斉に唾が吐き掛けられた。額を流れる唾液を拭おうとしてコートのフードを脱ぐと、攻撃は一段と激しくなった。その間、ボス猿はずっと笑い続けていた。
笑顔が威嚇の延長線上に位置すると知ったのは、それからしばらく後のことだった。あのボス猿が何に怯えていたのかは知らない。私のUVクリームの匂いか、コートから垣間見る赤目か。あるいは自分の地位を脅かす若者か。彼らの知性がどれほどのレベルにあるのかは知らない。共通の敵を作って矛先を転じさせたという解釈は、いささか強引に過ぎるのかもしれない。
私はよほどに白けた顔をしていたらしく、猿顔の大統領が急に人間の顔へ戻った。不機嫌そうに顎をしゃくり、それを合図に二人の黒服が私を執務室から連れ出した。
それから何日かの間、私は二本足の犬たちの元を連れ回された。私の身柄に大金が積まれた理由を知ったのは、実はこの時が初めてだった。
「デュランダルという名前を聞いたことがあるかね?」
銀縁眼鏡を指で押し上げながら、キリギリスのような顔の中年男性が私に問い掛けた。
中世はフランスのおとぎ噺。天使より遣わされた聖剣デュランダルは、勇敢な騎士であるローランの手中で異教徒たちを討ち払ったという。
天使を見たという私の役目は、その奇蹟を再現させることだった。
夜明けと同時に、集光用の反射鏡が太陽の位置をトレースし始めた。暗闇に閉ざされていたドーム状の空間に光の柱が降り立つ。容赦無く降り注ぐ光の粒子に、私は壁に備えつけられた簡易ベッドの中で身じろぎした。
目の動揺を抑えるタブレットを口の中で溶かしながら、ブランケット越しに目を慣らした。
扉の開く轟音と共に、男が朝食を携えて現れた。無言でこちらを見つめて私にテーブルへ着くよう促す。未だに下着姿の私は素直に従った。
壁際から見た光の柱はまるで絹糸のように細い。部屋の直径は100メートルもあるだろうか。こんなにもだだっ広い空間なのに床には塵一つも落ちていない。
ひんやりとしたフロアを横切り、中心に位置するテーブルへたどり着く。手前の椅子に私が座ると、コートに身を包んだ男が給仕を始めた。私にはパイントグラスへなみなみと注がれたミルク。私の反対側、光の中の無人席には冷凍カットフルーツとシリアルが置かれた。
私のミルクは相変わらず冷たかった。文句を付けようと振り返るが、男の姿は既に遠かった。私はグラスを目掛けてため息を吐き出した。
私はテーブルの上にもたれ掛かった。グラスの水滴がゆっくりと流れ落ちる。その向こうに見えるのは、カットフルーツの皿から立ち込めるもうもうとした水蒸気。今日も天使は来ないのだろうか。
ここへ連れて来られてから三ヶ月が過ぎている。
軟禁されること自体はそれほど苦でもないけれど、毎日の食事がこんな調子なのはとても辛い。太陽が出ている間に三食を摂らなくてはいけないのだ。おかげで朝食はいつもミルクだけ。起き抜けに固形物を入れられる胃袋は生憎と持っていない。
大統領からのビデオレターによれば、これも全ては天使を呼ぶために必要なプロセスだという。曰く、様々な宗教・文献・人物から得られた情報を元にこの国家的プロジェクトは進められている、とも。
ビデオは定期的に届けられ、回数を追う毎に彼の語り口は激しさを増す一方だった。最も新しいものは半ばコメディ映画の様相を呈してきている。百面相を思わせるかのような表情の切り替わりは最早常人のそれではない。目を大きく見開き、歯茎を剥き出しにして私を睨みつける大統領は、あの日に見た猿山のボスそのものだった。
大統領が怯えているのは国民の支持率と次の大統領選のことと、そして自分自身の心だった。彼は涙を流さんばかりにして私へ訴えかける。今、この世界には悪が蔓延している。私はこの国を、世界を代表して大いなる悪を滅ぼさなくてはいけないのだ。準備は万端整った。今すぐにでも世界の護り手を派遣することができる。しかし、これらの行動を起こすに当たっては神のご加護が必要となる。そう、我々の勇敢な戦士たちを一人たりとも死なせてはならないのだ――
随分と虫のいい話だ。リスクの無いリターンなんてあり得ないというのに。私のこの白い身体にしても、紫外線に弱いというリスクと引き換えなのだ。この国の、ひいてはこの世界の頂点にまで登り詰めた人間が神の助けを借りたいという。神の如く世界を掻き回しておいて、その因果が自分の身に降り掛かろうかという時には神の下私を装う。
考えているうちに胸糞が悪くなった。むかつきを飲み下そうとミルクに手を出すが、グラスは氷のように冷たい。
私は下着に引っ掛けておいたサングラスを着け、視線を上へと向けた。天井に穿たれた穴から挿し込まれる光。この光の奔流に乗って、天からの御遣いが舞い降りるという。こうして見る限りでは一向にその様子はない。
もしも本当に天使が現れたとしたら、一体何が遣わされるのだろうか。宝剣では今の時代にそぐわないし、かといって銃の類ではあまりに即物的すぎる。あるいはモノリスならばどうだろうか。猿面冠者の大統領にはお似合いな上に、進化を促してくれるというオマケも付いてくる。なかなか面白そうだ。
しかし、何を賜ってみても自分に対する見返りなどは期待できそうにない。この役目が終われば私の身柄はどうなるのか。ママのサインで私は世間から切り離されてしまい、帰る家を失った。私を消し去るにあたっての障害は無い。偉い人たちが欲張りさんであればこのまま天使の接待係としての職を与えられるかもしれないけれど、両者の差はほんの僅かだ。ただの殺しか、飼い殺しか。
それならばいっそのこと、天使からの賜り物の力で私が大統領になってやろう。世界初、アルビノの大統領だ。一国の支配者という特別の上に白い外見の特別を重ねた特別中の特別だ。天使と話せる能力も加えれば更に特別になれる。
私の視界の片隅に白い影がよぎったのはその時だった。
慌てて目線だけで影を追った。誰もいないはずのテーブルの対面に白い影が立ちすくんでいた。翼を広げたミルク色の人影。サングラスを取ると、影はより鮮明に見えた。
影は右腕を突き出し、手を上へ動かした。私がそれに従って立ち上がっても、なおその動きは止まらなかった。しばらく考えた後にテーブルの上へよじ登ると、今度は私を手招きし始めた。私は光の中の影に歩み寄った。フロアにボルトで固定されたテーブルは、軋み音の一つも立てない。
光の柱の手前で立ち止まっても影の手招きは続いた。この中に入れということなの、と口を開こうとした寸前に白い影が首を縦に振った。心を読まれている、という胸中の叫びにも影は首肯を見せた。
あなたは天使なのか。
肯定。
神からの賜り物はあるのか。
肯定。
それは大統領に遣わされるのか。
否定。
あるいは普通の人々へ。
否定。
では、私に?
肯定。
この光の中に入らなくてはいけないのか。
肯定。
これは神が与え給うた試練なのか。
肯定。
白い影の手招きは続いたままだった。
しばらく目を閉じて考え、おもむろに後を振り返った。鋼鉄製の扉と簡易ベッドが彼方に小さく見えた。
向き直り、一つ深呼吸をした。大きく一歩前へ踏み出す。
刹那、全身に痙攣が走った。
視界が朱に侵食される。
自分の腕に視線を落とすと、ストロベリーアイスの色が目に飛び込んできた。ちりちりという耳障りな音が聞こえる。これは何の音だろうか。皮膚が爛れる音、それとも髪が焼ける音。
私は苦痛で口をぱくぱくさせながら人影を見た。その人影――天使は確かに微笑んでいた。腕がすうっと持ちあがり、頭上を指差した。
私は引き攣る筋肉に鞭打ち、天を仰いだ。
私は見た、光り輝く炎を纏った天使たちの姿を。どこまでも続く光の海の中、最も手前にいる天使が私に手を差し伸べた。私はそれに応えようと、震える腕をゆっくりと掲げた。
あと少しで届こうかというその瞬間、鈍い音と共に視神経が焼き切れた。
永遠の暗闇の中で、私は絶望の叫びを上げた。
“見ざる、言わざる、聞かざる”
私がそう呼ばれていると、天使がそっと耳打ちをしてくれた。
降り注ぐ光で焼かれた私の目は、天使の姿だけを映すようになった。
枯れるまで苦痛を搾り出した私の喉は、天使の言葉だけを話せるようになった。
木霊する自分の叫びで潰れた私の耳は、天使の囁きだけを聞き取れるようになった。
光り輝く武器を手にした大勢の天使たちが、東の空を目指して飛んで行く。
「戦争が始まったの?」という私の問いにはそよ風が応えた。
包帯越しの風が肌に染み渡る。
Fin.
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