〜 花穂の場合(7) 〜
「か、花穂っ? どうしてここに花穂が?」
「お兄ちゃま、どうかしたの?」
白々しく訊ねると、兄は夢から覚めた直後のようにぼんやりと周囲を確かめた。
「いや、確かさっきまでそこに春歌がいて、鈴凛と四葉と一緒に叱られてたんだけど」
「お兄ちゃまのお話が長いから、勝手に晩ご飯食べに行っちゃったよ」
「ん、そうだったのか」
これはしまったという風に頭を掻く兄だが、何を残念がっているのかは花穂の目にも明らかだった。
「で、花穂がどうしてここに?」
「だって、お兄ちゃまがかわいそうだったもん」
「可哀想?」
「うん。だって、お兄ちゃまがすっごく熱心につま先のお話してたのに、春歌ちゃんも鈴凛ちゃんも四葉ちゃんもちっとも聞いてなかったもん。だから花穂ね、みんなに代わりに聞いてあげてたんだよ。花穂って、えらい?」
最後は雛子を真似して、ついでに小首を傾げてみた。何も知らないふりを装って。
「ああ、うん。花穂はえらい子だね。さっきの長靴の時もそうだったけど、花穂は本当に素直でいい子だね」
すっかり上機嫌の兄だが、花穂が正座をしているのを見るやたちまち表情が引き締まる。
「ダメじゃないか、花穂。正座なんかしちゃ。僕の話をちゃんと聞いてなかったのかい? 正座はつま先に掛かる負担が最悪だから、花穂のようなお尻の大きな子は特に危険だって」
「えっ、そうだっけ?」
そんなことは言ってなかったような、と記憶を確かめている間にも彼のターンは続く。
「それはともかく、せっかくのいいチャンスだからつま先を見せてごらん。いい子の花穂は他の悪い子たちとは違って、お兄ちゃまの言うことをちゃんと聞いてくれるんだよね?」
「う、うん」
正座を崩して女の子座りになった花穂は言われるままに左足を突き出し、そこでハッと思いとどまった。いつもの癖でついうっかり言うことを聞いてしまいそうになる。危ない危ない。
「見たところは特に異常はないみたいだけど、詳しく調べるためには直接触ってみないとね。うん」などと言い訳しながらじりじりにじり寄る兄。
しかし、魔の右手がカエルを狙うヘビのごとく迫ってきても、花穂の左足はヘビに睨まれたカエルのごとく動けずにいた。
花穂はこの期に及んで迷っていた。理屈の上ではこれがベストだとわかっていても、頭の中で何度も踏みつける様を思い描いてみても、いざ実際に目の当たりにするとやはり躊躇いが生じてしまう。
花穂はこれまで、兄に面と向かって逆らったことがない。さんざん渋った挙句に煙に巻いたり、衛たちの後押しでうやむやにして逃れたことはあっても、自分だけの意思で反抗した例がないのだ。
だが、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかなかった。
踵を支えに浮き上がったつま先に何かが触れる。
花穂はそれが何なのか目で確かめる前に、反射的に踏み潰していた。
温かくてごりごりと硬い物体。つま先を動かすと、表面だけがずるっとずれる。
花穂の足の下敷きになっていたのは兄の手だった。
――花穂がお兄ちゃまの手を踏んづけてる。
自分が何をしているのか理解した途端、花穂の全身に鳥肌が立った。
恐れでもなければもちろん寒気でもない――快感でぞくぞくしている。大勢の前でチアを演じた、あのときの興奮に似ている。ふわふわとして地面に足のついてないような感じで頭がぼうっとしていて、でも、自分がやらなきゃいけないことはハッキリしている。
「どうしたんだい? そんなことしたら花穂の足をチェックできないじゃないか。まったく、花穂はドジだなぁ」
彼はまだ、花穂の変化に気づいていない。いつも通りのドジだと思っている。
そこで花穂はアピールを試みることにした。今の自分がいつもと違うということを、しっかりと――しっかりと踵に力を込めて。踵を支点にお尻をずりながら近づく。
手を釘付けにされ、それでようやく異変に気づいたようだ。
「……花穂?」
怪訝そうなその問い掛けにも答えずにいると、兄はもう片方の手で花穂の左足を除けようとする。だが、それよりも早く花穂の右足が押さえ込む。
「ダメだよ。お兄ちゃま」
自分で聞いてビックリするほど楽しそうに弾む声。それでますます楽しくなり、踏みつける踵にも力が入る。
「だって、お兄ちゃまはいじめられるのが好きなんでしょ?」
「えっ?」
「隠さなくてもいいよ。花穂ね、お兄ちゃまがまぞだって知ってるんだから」
「マ、マゾって、いや、それは――」
花穂は無言で右足を掲げ、つま先を兄の顎に添えてそのままくいっと持ち上げた。反論の途中で口を封じられたにも関わらず、兄は言葉にならない言葉をのどで転がすだけで他に抵抗を見せない。そんな煮え切らない態度に、花穂の自信と確信が一段と強まる。
「ほらね。こんなことされてもお兄ちゃま、ぜんぜん嫌がらないんだもん。ミカエルでもつま先を向けたら嫌な顔するのに」
くすぐるようにつま先を動かすと、ヒゲの剃り跡がしょりしょりと心地よい。
「でも、花穂はこれぐらいでお兄ちゃまのこと嫌いにならないよ。……可憐ちゃんや春歌ちゃんは違うと思うけど」
「それで、か、花穂は、どうしたいの?」
頭を仰け反らせた兄は苦しそうな声を出す。その顔が赤らんでいるのは苦しさによるものか、それとももっと別の何かのせいか。
「ダメだよ」
兄の荒い鼻息が脛をくすぐり、花穂はくすくすと笑いながら再度ダメ出しをする。
「今のお兄ちゃまは、花穂の言うことを聞かなきゃダメなの。だって、お兄ちゃまが自分からどういうのがいいのかお願いするのって、そんなの全然いじめじゃないよね」
「いや、全然そんなことはないと思うんだけど」
今やエビ反り状態となった兄は一息にそう吐き出し、ひゅうっと大きく息を吸い込んで続ける。
「かっ、花穂がまだ知らないだけで世の中には色々な商売があって例えばエスエ――」
「どうしてそんなこと言うの?」
花穂は問答無用で兄の口を塞いだ。
「花穂、お兄ちゃまにしゃべってもいいよって、一言も言ってないのに」
足の裏を押し付けられた上にこの物言い。おまけに頭を軽く仰け反らせての視線は見下し感十分で非の打ち所がない。もちろん、兄の言う『色々な商売』的な意味で。
そして、当の花穂もこの特殊な状況に適応しつつあった。『お兄ちゃまに喜んでもらうため』にこわごわ始めたはずが、今は純粋な楽しみとして。他人を自分の言いなりに操ることがこんなにも気持ちいいなんて思いもしなかった。拝み倒してなだめすかして、やっとの思いで衛を動かしていたのとはまるで違う。――先輩がどうしてあんなに厳しいのか、だんだんわかってきたかも。
「それで、お兄ちゃまは花穂にどうしてほしいの?」
そう訊ねながらも足の裏で口を封じたまま。花穂はすっかりノリノリで、つま先を器用に蠢かせて兄の顔を蹂躙する。頬を五本の指で引っかき、土踏まずを軸に唇ごとねじり、親指と人差し指で鼻の頭をつまむ。
ミカエルでも怒ること間違いなしの仕打ちにも関わらず、兄は完全に花穂のなすがまま。身をもって『足フェチ』の意味を知った花穂にもはや遠慮の二文字はない。
「そういえば、お兄ちゃまって足フェチなんだよね」
夢中になってつま先を追い掛けていた兄の目が瞬時に花穂へ向き直る。
「んー、どうしよっかなー」
途端に強まる期待の眼差しに花穂はくくっと喉を鳴らした。こんなに露骨だと呆れを通り越して笑うしかない。
「足フェチって立派な変態さんなのに、お兄ちゃまはイヤじゃないの? お兄ちゃまは、花穂に『変態』って言われてるのと同じなんだよ?」
しかし兄は、顔色をわずかに赤くするばかりで全く動じた様子はない。
「ふぅん、そうなんだ。変態って言われるよりも、こうしてたほうがいいんだね。お兄ちゃまは」
言いながらほんのちょっとずつ足を引き戻すが、なぜか一向に彼の顔から離れようとしない。理由は明らかだ。その証拠に、いきなり足を止めると足の裏でくにゃっとひしゃげる感触があった。
花穂はふっと表情を曇らせながら吐き捨てる。
「……それってすっごく変態だよね」
さすがの花穂も、相変わらずの兄の態度にだんだん腹が立ってきた。何を考えているのかまったくわからない。――いくら『まぞ』だっていっても、花穂にバカにされてもぜんぜん平気で、それどころかすごくうれしそうだし、花穂はこんなお兄ちゃまでも本当にいいの? このお兄ちゃまは、本当に花穂のお兄ちゃまなの?
あれこれと考えているうちに、花穂の中で再び恐れが蘇ってくる。自分のいじめ方を試されているのではないか。いじめ方がダメだと後で叱られるのではないか。いじめてくれるのなら誰でもいいのではないか。不安の種は尽きない。
だが、それよりも先に花穂の精神力のほうが先に尽き果てようとしていた。何しろ、もともとは『まぞ』な花穂。普段とは正反対の役回りを無理に演じていたのだから、限界が早いのも当たり前の話だ。
不安を抑えきれなくなった花穂の矛先は、自ずと不安の源――お兄ちゃまへと向けられる。
「お、お兄ちゃまの……バカ」
罵りざまに軽く蹴り飛ばすと少しだけ気分が晴れた。その『発見』に花穂は俄然勢いづく。力を入れて蹴りやすいよう、両腕を床に突っ張らせた。そしてまずはジャブの代わりに軽く一蹴り。
「お兄ちゃまの、まぞっ」
べしっと鈍い音がして、兄の顔が横を向く。もちろん彼は何も言わない。何もしない。されるがままにされっぱなし。
それでようやく花穂の顔に笑みが戻った。それも、唇の端を吊り上げたとびきりいびつな笑みが。
「お兄ちゃまの変態、変態っ、ド変態っ! お兄ちゃまなんか、変態のくせに! いじめられて! よろこんじゃう! まぞのくせにっ!」
ひとしきり罵り終えた花穂は肩で息をする。波のように遠くへ引き上げる不安の代わりに、もっと別の何かが花穂の胸をいっぱいに満たした。不安とはまったく反対の、楽しくて心弾むような気持ち。
それが何なのか、花穂にはすぐにわかった。
それは『よろこび』だった。
「でも、勘違いしないでね。花穂はこんなことが好きなんじゃなくて、お兄ちゃまのことが好きだからやってあげたんだよ」
自分の足を動かしていたものに気づいた瞬間、花穂はそう口走っていた。いじめてよろこんでるなんてバレちゃったら、きっとケーベツされちゃうかも。花穂が先輩を苦手にしてるみたいに、お兄ちゃまに避けられちゃうかも。花穂の足がひとりでに引っ込む。
もちろん『しごき』と『いじめ』は似て非なる別物だ。しかし、いつもしごかれる側の花穂はその区別がつかない。人が苦痛にあえいでいるさまを、そのまま自分の身に置き換えてしまいがちだ。兄の頬に広がる赤い足型を見ていると、こちらの頬までずきずきと痛んでくる。
花穂が再び不安に怯えるその一方で、兄は苦痛に顔を歪めるでもなく見た目超然としている。わずかに切れた唇の端を舐め上げた以外は口を閉ざしたままで、花穂の行為をどう思っているのかさえ定かではない。沈黙を承諾の証と受け取れるほど花穂の神経は図太くないのだ。
「――ねぇ、お兄ちゃま」
無言の作り出すプレッシャーに耐えかね、花穂は再びつま先を差し出した。ただし、今度は兄の目の前をちらつかせるようにして。
「花穂の足、お兄ちゃまの好きにしていいよ。さっき花穂に逆らわなかったから、そのごほうびの代わり」
言い終えるかしないうちに兄の顔がずいっとつま先に迫る。生温かい鼻息に驚いた花穂は同じだけ足を引き戻す。と同時に、さっきのはあれで大丈夫だったのね、と胸をなでおろした。変に遠慮なんかしないで、もっとちゃんといじめてあげたほうがいいのかな?
自信を取り戻した花穂は「まだダメ」と、兄の前髪をつま先でぐしゃぐしゃにかき回す。
「ごほうびだけど、花穂の言うことはちゃんときかなきゃダメ。わかった?」
しかし兄は、花穂のつま先を追うのに夢中でうんともすんとも返事をしない。花穂の目がすうっと細くなる。
「お・に・い・ちゃ・ま?」
髪を足の指で挟み、そのままぐいっと上に持ち上げた。
「聞こえてたよね?」
髪をそのままに頭を押さえ込み、強引に頷かせる。
「花穂に逆らったらいじめてあげないよ。それでもいいの? よくないでしょ?」
そう問い詰めると、今度は兄が自ら首を縦に動かす。
頭を垂れて無言を貫き通す兄の姿に、花穂は奇妙な既視感を覚えていた。
「そうしてると、お兄ちゃまってホントにミカエルみたい」
頭上に手をかざされたミカエルは、何度かまばたきをしながら自然に頭が下がるという癖がある。今の兄も踵で目元を塞いでいるので、その点でも似ている。そして、隙あらばつま先に舌を這わせようと狙っているところも。
「だって、ミカエルもつま先が大好きみたいだから。花穂がサンダルを履いてるときは、かならず花穂の足をくんくん嗅いだあとにぺろぺろ舐めてくれるの」
足の裏が急に忙しさを増してくるが、花穂はぐっと力を入れて封じ込める。どこかで、みしり、と軋む音がした。
「でも、ミカエルがぺろぺろするのは花穂だけじゃないんだよ。衛ちゃんも雛子ちゃんも亞里亞ちゃんも、裸足だったらミカエルは誰でもいいみたい」
さりげない口調でそこまで言うと、花穂は急に押さえ込みを解いた。
「だけど、お兄ちゃまはミカエルと違うよね? ぺろぺろするのは花穂だけだよね?」
すかさず足の裏が縦になぞられ、望み通りの答えを得た花穂は思わずくすくすと笑った。
「じゃあ、今度こそホントにごほうび。あっ、だけどその前に――」
急にラズベリーソースの存在を思い出し、花穂は傍らの小皿を取り寄せる。
「ただぺろぺろするだけじゃ面白くないでしょ? だから、これ」
見せつけるように掲げると、兄の目が輝くのがわかった。乱れた前髪越しにもハッキリとわかるほどその光は強い。尻尾があったら勢いよくぶん回していること間違いなしだろう。
兄のよろこぶさまに、自然と花穂のテンションも上がる。
「うれしい? こんなことしてあげるの、花穂だけなんだから。絶対うれしいに決まってるよね」
小指の先ですくい取ってこれみよがしに舐めると、甘く酸っぱいラズベリーが喉に切なく焼きつく。
「ほら、お兄ちゃまも」
器ごと傾けてソースを掛けようとする花穂。しかし、肝心のつま先は兄に差し出されたままで不安定極まりない。案の定、ラズベリーソースがべちゃりと床に落ちた。
「あーあ、またドジやっちゃった」
いつになく気が大きくなっているので、いつものドジもさほど気にならない。どうやって片付けようと考えを巡らせるが、すぐにその顔がにんまりと笑みを浮かべる。すぐ目の前に絶好の片付け屋さんがいることに気づいたのだ。
「舐めて」
何気なく言い放ち、花穂はつま先で床を指し示す。
「舐めてキレイにして。ごほうびはそのあとね」
しかし、兄はみじろぎひとつしない。心なしか不服そうに花穂のつま先を見つめているだけ。
「どうしたの? 花穂の言うことは聞かなきゃダメだよ。ごほうび、欲しくないの?」
つま先をひらひら踊らせても鼻先をぐにぐに弄んでも反応なし。いい加減に焦れてきた花穂は、高々と上げた踵を兄の頭上目掛けて振り下ろした。
「聞こえなかったの? 早く舐めて、お兄ちゃま」
そのまま力を加えて強引に俯かせようとしたその時、踵の下にあったものが忽然と消え、代わりに足首が掴まれる。足を宙に固定されてもがく花穂の視界をふっと影がよぎり、直後、鈍い音と共に額へ激痛が走った。
「痛っ!」
反射的に閉じた目の前で星が飛び散っている。一体何がぶつかったのだろうと目を開けると、親指と中指で作った輪をそろそろと近づける兄の姿が目に飛び込んできた。二発目のデコピンに備え、花穂はまたぎゅっと目を閉じる。
「ごっ、ごごごごごめんなさいお兄ちゃま花穂もうこんなことしないからだから許し――」
「あーあー、こんなに汚しちゃって」
「……へっ?」
いつも通りの声色に恐る恐る目を開けると、兄の顔はもうそこにはなかった。身体を起こして確かめようにも足首は掴まれたままで、しかも兄の声はつま先のほうから聞こえてくる。
「花穂はドジっ子なんだから、どんなときでも気を抜いたらダメだよ」
「ご、ごめんなさい……」
さっきまでのテンションはどこへやら、花穂もすっかりいつもの花穂になってしまう。
「食べ物を粗末にしたらダメだって、いつも言ってるじゃないか」
「それはそうなんだけど、でも」
「第一、マゾと足フェチは全然別物なんだ。さっきのも途中まではよかったけど、態度は一貫してなくてちぐはぐだし」
兄の声がそこで途切れ、足の方向でもぞもぞと動く気配がする。
「お、お兄ちゃま、そこで何してるの……?」
「決まってるじゃないか。本当の足フェチを直接身体に教えて――」
次の瞬間、再び鈍い音がした。
とっさに額を押える花穂だが、身体はどこも痛くない。それからほどなくして足首から兄の手が滑り落ち、続けざまにどさりと重く何かの投げ出される音がした。
「大丈夫ですか?」
蛍光灯を背にした黒い人影が不意に視界の端から現れ出る。意外な人物の登場にぽかんと口を開けたままでいると、彼女は手にした長い棒のようなものを後ろ手に隠した。
「峰打ちですから、兄上様の命に別状は」
四葉ほど時代劇に詳しくない花穂でも、峰打ちがどういうものかはわかる。刃物じゃないバットにそもそも峰なんて存在しないような……?
「それにしても、兄上様にも困ったものです。自分からは手を出さないという約束でしたのに」
身体を起こして鞠絵の視線の先を追うと、兄が床へうつ伏せになって倒れていた。赤く染まった指先を花穂の足へと向けた格好だが、もちろん怪我をしているわけではない。ということはつまり――
ハッと顔を上げたそのときには、ため息ひとつを残して部屋を出ていくところだった。お下げ髪と入れ替えにやってきたゴールデンレトリバーが兄のズボンの裾をくわえ、そのままずるずると引っ張って外に運び出す。
そして、花穂だけがひとり取り残された。
「えっと、あの……ど、どうすればいいの?」
※なお、床に落ちたラズベリーソースは本物のミカエルが後でおいしくいただきました。
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